江戸紅型が染上がるまでの物語
現代感覚も大切にしながら伝統技術を受け継ぐ江戸紅型の工房とくるりとのコラボレーションは、これまで数々の大ヒット商品を生み出してきました。
2019年秋冬コレクションに向けて江戸紅型染の半幅帯の企画を進めることになり、久しぶりに工房にお邪魔させていただきました。
モノクロームのシンプルな型紙から色鮮やかな完成図を思い描くこと。私たちにはなかなか骨の折れる仕事ですが、職人さんは型を見ただけで何通りもの彩のパターンが閃くのだそうです。
どの図案も歴史が深く、ずっと見ていたくなるような魅力があります。
その中で私たちが選んだのは、伸びやかに描かれた植物が印象的なこちらの柄です。
流麗な線の流れとエレガントな雰囲気が素敵ですね。
そしてもうひとつは、割付模様と花唐草の繊細な重なりが美しいこちらの柄です。
この日選んだ型は一旦会社に持ち帰って、配色の選定・指示書作成をし、正式に依頼してから、職人さんたちの作業が始まります。
職人さんたちの伝統に培われた手作業によって生み出される江戸紅型。琉球本紅型や京都紅型の良さとはまた違い、渋みと、優しさのある色味が魅力です。
ここで、以前依頼させていただいたときの作業風景を見てみましょう!
染めは、「糊置き」という作業から始まります。
まず、長さ8メートルにもおよぶ長板に布を張って固定をし、その上に型紙を使って防染糊を置いていきます。
布から型紙をはがすと、、! 型通り繊細に、そしてしっかりと糊が乗っています!
型紙の長さはせいぜい30~40cm前後というところ。そのため、一反を染めるには数十回の型送りが必要です。
型送りによる型紙と型紙との継ぎ目を完璧に合わせるには、熟練の技量が求められます。
こうして「糊置き」を終えると、次は「糊乾燥」へと作業が移ります。
乾燥作業は天候に大きく左右されるため、日々最新の天気予報をチェックしながら作業の可否判断や工程管理をしているそうです。
「糊乾燥」の作業が無事に完了すると、いよいよ「色挿し」が始まります。
「色挿し」は、下絵の模様部分に色付けする作業です。
色挿し専門の職人さんが、手挿しで染めていきます。色数が多ければ多いほど、作業は困難になるといいます。
一般的な染め物には「染料」が使われますが、江戸紅型は「顔料」を使って色付けされています。顔料は、粒子が大きく不溶性で、発色は良いのですが、染料に比べて染まりにくいという特性があります。
そのため、筆を使って何度も色を浸透させる作業を繰り返します。
「色挿し」が終われば、いよいよ作業も大詰めへと近づいていきます。「色挿し」によって染められた布を蒸気で蒸しあげて、色を定着させる「蒸し」の作業へと移ります。
作業場の中にある木製の蒸し器の中に、布を畳んで入れて蒸します。蒸すことで、色の発色も鮮やかになるのだとか。
「蒸し」が終われば、洗い場で「水洗い」をします。大きな洗い場で、布を等間隔に手繰り寄せながら泳がせるようにして、丁寧に糊を落とします。
糊が残ってしまうと後々変色の原因になってしまうので、入念に、慎重に糊を落としていきます。細やかな心を持つ日本人だからこそ為せる作業かもしれませんね。
糊落としが済んだ布は,1反ごとに張り手に挟み、平干しにして乾燥させます。
最終的に「湯のし」をして、完成となります。
いかがでしたでしょうか。
古き良き日本の伝統、そして、職人さんの繊細な手仕事を、これからも後世へ残していきたい。改めてそう思うのでした。
さて、そうこうするうちに、さっそく先日お願いしていた江戸紅型染めの半幅帯が染め上がってまいりました。
最初に選んだ「植物が伸びやかに描かれた印象的な柄」は、こんな感じに仕上がりました。
瑠璃(るり)色がとても美しく、爽やかで上品な雰囲気を醸しています。
さて、もう一枚の「割付模様と花唐草が組み合わせられた繊細な柄」はどうなったかといいますと・・・!
蘇方(すおう)色を基調とした、秋らしい深みのある色合いに染まり上がりました!
大人っぽいシックな色合いですが、女性らしい華やかさも感じさせてくれます。
生地は風合いの良い「ぜんまい紬」を使用しております。ぜんまいの新芽の綿毛を、真綿に混ぜ込んで紡いだ糸を緯糸(よこいと)に織り込んだ、独特の地風が特徴です。江戸紅型の上質な意匠と相まって、通好みの雰囲気を漂わせます。
こちらの江戸紅型染めの半幅帯は、2019年9月5日発売開始予定となっております。
早期完売が予想される商品です。お早めのご購入をお勧めいたします。