東京の真ん中に、都会に居ること忘れるほど安らげる「小さなホテル」があります。少し坂を上った小高い場所にある、その名も《山の上ホテル》。
まだ、東京に4~5件ほどしかホテルが存在していなく、ホテルが一般の人々にとって縁遠い存在だった昭和29年に開業しました。
客室はわずか35室。どれ一つとして同じレイアウトの部屋がない珍しい造り。スイートルームには専用の坪庭があり、季節の景観を楽しめます。訪れた時には、綺麗な梅が咲いていました。
ロビーには、時代小説作家《池波正太郎》さんが描かれた絵がいくつも飾られています。
「なぜ池波さんの絵が、、?」
それは、池波さんがこのホテルの常連客の一人であったからなのです。
あまたの出版社が建つ神田や神保町に近い立地もあり、創業当初より多くの作家の方が執筆活動をするために利用していました。いわゆる「かんづめ」です。
メールやFAXもない時代には、締切前になると、原稿を待つ出版社の方々がロビーに溢れかえっていたそうです。
執筆に行き詰まった作家先生が、この階段を行ったり来たり、なんてこともあったかもしれませんね。
レストランやバーが充実しているのも、このホテルの魅力。池波さんがこよなく愛した「てんぷら」や、鉄板焼やフレンチなど、いつでも美味しいものを提供し、気持ちよくくつろぎ、ゆっくり眠っていただくことを《山の上ホテル》では大切にしています。
静かな時間が流れる「バー ノンノン」。クラシックな英国風のカウンターでリラックスタイム。
△コースターには、画家「遠峰 健」さんが竹筆で書いた味わいのあるロゴが。ホテル滞在をゆっくり満喫するのって、ちょっと大人な楽しみですよね。 でも、着物でバーは少し背伸びしすぎだったかな。ちょっと緊張してしまいました。
彼の三島由紀夫さんはこう言いました。
「ねがはくは、ここが有名になりすぎたり、はやりすぎたりしませんやうに」
このホテルの、他では味わえないぬくもりある空間や心のこもったサービスを象徴しています。都会に居ながら癒されたい時、少しだけ坂を上って訪れてみてはいかがでしょうか。
山の上ホテル東京お茶ノ水、駿河台の高台にあり、開業以来「文化人のホテル」として広く知られる。食の山の上と言われるほど、レストラン&バーも充実。
https://www.yamanoue-hotel.co.jp/